2014都民芸術フェスティバル参加公演
東京シティ・バレエ団「白鳥の湖」全幕
2014.1.25 ゆうぽうとホール
2of 3
Tokyo City Ballet
Swan Lake
黄凱 &志賀育恵
第2幕はオデットの登場。志賀育恵は、小柄ながら芯のある立ち姿がとても特徴的。トゥで進む姿も美しく安定し、両手による羽ばたきも、しなやかながら力のある白鳥らしさをしっかり見せていた。白鳥というのは、一見、白く華麗で優美でありながら、大陸を横断して飛ぶ力強い身体性を備えた鳥だ。志賀はその華麗さと力強さを備えており、プリマとしての存在感には、いつ見ても納得させられる。黄凱も物語を支える演技をしっかり見せていた。
四羽の白鳥:大内雅代、佐合萌香、中森理恵、松本佳織
三羽の白鳥:平田沙織、岩渕美希、佐々晴香
小林洋壱のロートバルトは、若さが感じられるダイナミックな振りのエネルギーで、登場すると舞台空間をしっかりと支配しており、安定した技術とエネルギーがバランスよく伝わる。三羽の白鳥は見応えのある踊りであり、有名な例の手をつないだ「四羽の白鳥の踊り」も安定していた。装置はゴシック感溢れる森の中で、バリライトを巧みに使った霧にかかる木漏れ日をスモークとともに表現し、暗めの足立恒の照明がこの雰囲気ある場面を盛り立てていた。
道化:玉浦誠、名越真夕、松本佳織、木暮絵梨子、石井杏奈
婚約姫:大内雅代、尾之内亜紀、坂本麻実、清水愛恵、平田沙織、飯塚絵莉
第3幕、宮廷の場面はゴシック建築の内部、尖塔の内側の構造を見せており、なんとも重厚で見事な装置と照明。安達悦子の女王が美しく輝きつつ、王子ジークフリードの黄凱も、オデットに心奪われた「心ここにあらず」の演技から、貴族的雰囲気をまとっていた。
スペイン:土肥靖子、岩渕美希、佐藤雄基、李悦
チャルダッシュ:大石恵子、チョ・ヨンミン
草間華奈、扇春佳、薄井友姫、海老名照美、浅井永希、高井将伍、上村浩一、二上史生
ナポリ:中森理恵、岸本亜生
宇野澤寛子、大山詩織、渡邉優、宮崎真衣、河野麻子、中村緋女、折原由季、高野まどか
そして道化の玉浦誠が再び物語を巧みに進めていく。衣裳は左右の足を黒と白、両腕も対応したアシンメトリーで、素肌に見える片足がドキリとさせた。チャルダッシュやマズルカでは、男性ダンサーたちが軍靴を打ち鳴らすなど、舞台にアクセントを与えており、群舞の提灯などが独特の雰囲気を醸している。そして、いずれの群舞も巧みに交差する独特のフォーメーションと展開を見せており、観客を飽きさせない。
マズルカ:若林美和、古藤舞、友利知可子、岡博美
春野雅彦、阿部賢治、内村和真、石黒善大
黄凱 &オディール:志賀育恵
黄凱 /ロートバルト:小林洋壱/志賀育恵
黒鳥オディールとなった志賀育恵も見事なテクニックで、グランパドドゥを踊り切った。グランフェッテ・アントゥールナンももちろん、悪魔的というよりも一種のコケットリーを感じさせる小悪魔のようだったが、王子を巧みに誘惑するところは演劇的にしっかりと演じられている。そして黄凱も見事なテクニックで王子を演じ切っている。以前よりジュテの高さや若さは抑えられているが、それがかえって「王子」の貴族的な雰囲気を高めたといえるかもしれない。石田は後に記すように、『白鳥の湖』を王子ジークフリードの物語としており、それを黄凱がしっかりと描こうとしたのだろう。