3of 3 Tokyo City Ballet Swan Lake
王子とロートバルトの闘いの後、白鳥たちが人間に戻っていくという演出は、ドラマツルギーとしても説得力があった。特に物語を取り巻く群舞の構成が巧みで、アシンメトリーな構造から、最後はオデットを取り巻くところが、螺旋状の構造になっていき、伏せた白鳥と主人公たちとの対比など、非常に美しく感動的な場面を演出していた。
これを支えているのは、足立恒の抑えた照明でもある。衣裳も、前述の道化の足と腕が左右異なる黒と白の対比であったり、民族的な群舞でも片足のみのアクセントなど、巧みにシンメトリーを破る要素を入れていることも面白かった。
そのため今回の『白鳥の湖』は、プティパ、イワノフ版に基づいて1969年に振り付けられたが、ハッピーエンドを含めて、随所にブルメイステル版の影響を受けているとも考えられる。また、今回のパンフレットに再録された石田の文章によれば、「このバレエはジークフリードの青春を描いた、男の舞踊」、「1人の男の過ちと成長という普遍的な物語」であり、「私の生き様を映し出した、男の物語でもある」という。そんな亡き石田の思いを黄凱が描こうとした舞台だった。
舞踊批評家 志賀信夫
音楽/P.I.チャイコフスキー 芸術監督/安達悦子 演出・振付/石田種生(プティパ、イワノフ版による) 演出助手/金井利久 ゲストバレエマスター/ラウル・レイモンド・レベック バレエマスター/中島伸欣 バレエミストレス/長谷川祐子 加藤浩子 民族舞踊指導/小林春恵
指揮/井田勝大 編曲/福田一雄 演奏/東京ニューシティ管弦楽団
美術/横田あつみ 照明/足立 恒 衣裳/小栗菜代子 大道具/(有)ユニ・ワークショップ 衣裳製作/工房いーち 舞台監督/橋本 洋 舞台監督助手/淺田光久 後援/東京バレエ協議会 主催・制作/東京シティ ・バレエ団