2014都民芸術フェスティバル参加公演
東京シティ・バレエ団「白鳥の湖」全幕
2014.1.25 ゆうぽうとホール
1of 3
Tokyo City Ballet
Swan Lake
道化:玉浦誠
志賀信夫の「動くからだと見るからだ」
東京シティ・バレエ団「白鳥の湖
バレエ『白鳥の湖』が、敗戦の翌年の1946(昭和21)年に日本で初演されてから68年。後の上演の歴史の一翼を担ったバレエダンサーで振付家の石田種生が、2012(平成24)年4月に亡くなった。石田は慶應義塾大学在学中にバレエ研究会に参加、服部・島田バレエ団を経て松山バレエ団で活躍。1954年には、『白毛女』の台本を松本亮とともに書いて主役に抜擢され、さらに1960年には松山樹子の相手役として『白鳥の湖』を踊っている。
ジークフリード:黄凱 &王妃:安達悦子
ボルフガング:青田しげる
その後、振付家としての活動を始め、1968年には有馬五郎、内田道生らとともに東京シティバレエ団を設立し、主にこのバレエ団で多くの作品を振り付けてきた。2013年の7月に東京シティバレエ団が石田の『マイセルフ』と『挽歌』を上演したことは記憶に新しい。『マイセルフ』は、暗い照明の中にくっきり浮かび上がる女性の動きが、男性の黒子的存在によって身体を際立たせ、生演奏によるショパン『前奏曲ホ短調』とともに心に沁みた。『挽歌』はシベリウス『トゥオネラの白鳥』による女性6人の抽象的バレエで、いずれも過去の作品ながら、石田種生の新しさを垣間見た思いだった。
パ・ド・トロワ:大内雅代、佐合萌香、内村和真
ロートバルト:小林洋壱
黄凱 &オデット:志賀育恵
そして今回、石田が1969年に振り付けた『白鳥の湖』を上演した。東京シティバレエ団は現在、東京都江東区住吉にあるティアラ江東を本拠としており、今回、五反田のゆうぽうとホールで上演したのは、バレエ団として、創設者の1人石田を追悼するという意思の現れでもあるのだろう。石井清子を引き継いで現在芸術監督を務める安達悦子が出演したことからも、その思いが推察できる。今回の『白鳥の湖』はプティパ、イワノワ版を元にして振り付けたもの。オデット/オディールを志賀育恵と若生加世子、王子ジークフリードを黄凱とユニバーサルバレエ団のオム・ジェヨンのダブルキャストで、1月25日、26日に上演した。筆者はその25日を見た。
第1幕でまず目に止まったのは、玉浦誠による道化だ。両足を折り曲げたジャンプに始まり高さも滞空時間もずば抜けており、「おや」と思わせる動き。そして、身軽なモードで次々とジャンプ、踊りを繰り広げて、まさに「道化」としてこの物語を展開させ、とても魅力的だ。玉浦は、2007年ジャパングランプリのフルスカラシップ賞でピッツバーグ・バレエ・シアターへ2年間留学して、東京シティバレエ団へ入っており、今後も注目したいバレエダンサーだ。
王子の友人によるパ・ド・トロワ。中心になる内村和真はしっかりしたテクニックによる踊りでエネルギーも感じられた。また、王子ジークフリードを踊る黄凱は、ダンスノーブルの雰囲気を漂わせ、相応しい存在感を見せていた。群舞の構造は、フォーメーションを変えながら、常にシンメトリー(対称性)とアシンメトリー(非対称性)を行き来するもので、少しずつそこから力動感が芽生えてくる。また、王子の友人たちの杯を高く掲げた群舞も印象に残っている。