谷桃子バレエ団
コンテンポラリーダンス
「トリプルビル」
17.7.2 かめありリリオホール

2of 3
Tani Momoko Ballet

Contemporary Dance Triple Bill

「Nontanz」
振付/柳本雅寛
音楽/松本じろ
衣裳コーディネイト/Ayavery
振付助手/小松詩乃

 柳本雅寛は、早くから欧州で活躍し、国内ではコンテンポラリーバレエの作品に出演してきたが、2006年からは大植真太郎、平原慎太郎らと「C/Ompany」を結成して活動している。ここに森山未來も加わって、そのうち3人が「談ス」という刺激的な舞台もつくってきた。さらに柳本自身が2011年に+81を主宰し、さらに辻本知彦を加えたメンバーととともに、積極的に公演を行っている。

 題名がノンタンツ、英語だとノンダンスであり、普通に考えると踊らない踊り、つまり近年、フランスなど欧州のコンテンポラリーダンスでよく見られる、踊りのないダンス公演をイメージするだろう。だが、柳本のノンタンツはそうではない。振付の多くは群舞であり、揃って立ち、踊るというものであって、むしろダンシー、「踊る」ダンスといっていい。それをノンタンツと敢えて名付けたのは、逆説というか、その裏を意図したのだろう。
 静かに上からの光、サスペンションが入ると中央奥に並ぶ一群が浮かび上がり、消えていく。こういった光の使い方で舞台を構成する。その一群に再び光が当たると女性たち。そしてそこに男性たちが絡んだ踊りが展開する。そして舞台のイメージを決定づけるもう一つの要素が音楽である。
齊藤 耀、上島里江、森本悠香、山本知佳、篠塚真愛、島倉花奈
三木雄馬、安村圭太、牧村直紀、中村慶潤、 横岡 諒
 音楽を担当する松本じろは、コンテンポラリーダンスで一世を風靡した黒田育世の舞台の音楽で注目された。黒田の『モニカ、モニカ、モニカ』は、松本じろのギターのリフレインと声で構成され、その中東的な節回しが印象的だった。その後も黒田の主宰するグループ、Batikの舞台などで音楽を担当し、ギター、声を中心に鍵盤楽器が加わったりする独特の音楽で注目されてきた。今回、黒田が元々所属していた谷桃子バレエ団の公演なので、起用となるつながりがあるだろう。その松本じろの音楽が全体を通じて作品のトーンをつくっているといっていい。一つのメロディの変奏がたびたび登場して一体感を出している。
 群舞の後、三木雄馬と女性のデュオでは、シンプルなギターにリコーダーの音が絡み、柔らかい雰囲気を醸し出した。そのリコーダーは子どもが吹くような素人っぽい音を敢えて使い、男女の関係に田園的風景を浮かび上がらせた
 また、ギターの胴を叩いて出すドラム的な音、そのコードやメロディのないパーカッシヴな音の繰り返しによる群舞も、ビートが利いて効果的だった。そのなかで、男性がそれぞれブリッジのように、上向き四つん這いになり、その股の間に女性がそれぞれ頭を挟み、大の字になって倒立するという場面は、かつて見たことがないもので、とっても印象的だ。最後は、序盤から繰り返されるメロディの変奏から音楽がダイナミックに展開して、揃った群舞が全員で踊られ、動きのダイナミズムを獲得し、群舞ならではの盛り上がりを獲得して、見事だった。