2005年スターダンサーズ・バレエ団3月公演

2005.3.12&13 ゆうぽうと簡易保険ホール


2of 3

STAR DANCERS BALLET
「PILLAR OF FIRE」

上之恵民/友杉洋之 白椛祐子/新田知洋  福島昌美/樽井裕典
 冒頭で戸口の女性の動き、右手を静かに上げる動きに、「おお」と思った。もうここだけで十分、その女性(小山久美)の踊りの素晴らしさがわかる。そして踊りだすと、これが本当に素晴らしい。踊りが染み込んだ身体が、すべてを抑えた動きを見せる。ちょっとした動きの端々に、その身体が伝わってくる。
ヘイガー:小山久美&妹:鈴木美波
 アントニー・チューダーのドラマティック(物語)バレエ。3人姉妹の1人が妹に彼を取られて云々というストーリーだが、あらすじを読まずとも、それがよくわかる面白い作品。いわば最近流行った言い方では、「負け犬」的な女性、その葛藤と最後の勝利というところだろうか。設定全体も面白く、芝居のように見ることができる。いやむしろシェーンベルクの音楽のイメージなど、1950年代前半の英米の映画のような感じだ。
新村純一&小山久美
ベン・ヒューズ/鈴木美波/小山久美/姉:周防サユル
「火の柱」

振付/アントニー・チューダー
振付指導/サリー・ウィルソン
音楽/A. シェーンベルク
“浄められた夜 op.4”
装置/眞木小太郎
衣裳/ヒュー・ラング

 小山久美は決して激しくは踊らない。本当に繊細な動きのなかに、その嫉妬、絶望などの感情、激情が浮かび上がる。2003年にバレエ団代表となった小山は、ベテランでしか出せない、いやおそらく彼女しか出せないものを表現している。それが見ているすべての人に、しっとりと伝播する。今回はこの優れたバレリーナの繊細な踊りを堪能した。特に終盤で恋人(ベン・ヒューズ)と踊るパドドゥで、腰の位置に抱えられた姿勢とそこからの反転など、動きの美しさは際立っていた。妹役の鈴木美波もその軽妙さが目に止まった。
小山久美&ベン・ヒューズ
 こういう抑えたソロを見せる作品というのは、もっとあるといい。イリ・キリヤンはシニアのダンサーたちのグループとそのための作品を作っているが、日本でもベテランならではの踊りと身体性が感じられる作品を、もっと上演してほしいと思う。