2010都民芸術フェスティバル
(社)日本バレエ協会公演
「ジゼル」全幕
メアリー・スキーピング版

2010.3.27&28 東京文化会館大ホール

3of 3
JAPAN BALLET ASSOCIATION
Mary Skeaping's Virsion Giselle

 前にも述べましたが、全体としては演技や踊りの表現もきちんとしていて、神経がゆきとどいています。1幕はもちろん、2幕でもミルタが明快なマイムでアルブレヒトやヒラリオンにここで踊って死ねと命令します。最近、この部分がいい加減な演出が多く、欲求不満になっていたのですが、久し振りにスカッとしました。
酒井はな&ファビアン・ライマー
 さて出演者ですが、この回は最初と大分主役キャストが変わりました。結果としてジゼルは酒井はな、アルブレヒトはイングリッシュ・ナショナル・バレエでこの役の経験あるファビアン・ライマー。

 酒井は姿態、踊り、演技すべてに高いレベルで安定しており、見事な役づくり。悠々たる雰囲気で、風格さえ感じさせます。ライマーはやや練習不足かサポートは万全とはいえませんでしたが、バランスのとれたスタイル、真摯な演技でしっかり役を果たしました。

ジゼル:酒井はな
永橋あゆみ&法村圭緒
酒井はな&ファビアン・ライマー
ヒラリオン:沖潮隆之
ヒラリオン:原田公司
 小林貫太は、野性的ななかに繊細な感覚をみせ、とてもよいヒラリオン。第1幕ではジゼルとアルブレヒトにやや重点がかかっていたきらいがありますが、そのなかでペザント・パ・ド・ドゥの福田有美子、恵谷彰がさわやかな高い技術で目をひきました。
酒井はな/ファビアン・ライマー/テーラー麻衣
 第2幕ではプロポーションのよいミルタの小川友梨、しっかりしたドゥ・ウィリの大長亜希子、八島香奈恵はじめ群舞も健闘、バレエ・ブラン(白いバレエ)を実現しました。

 全体として、とくに初演版、復元版ということにこだわらずに、スキーピング版として楽しめばよいと思いますし、本日の舞台のできもなかなかのものでした。

2010年3月28日夜所見

舞踊批評家 うらわ・まこと

ドゥ・ウィリ:寺田 恵、呉 佳澄
ファビアン・ライマー/テーラー麻衣/酒井はな
STAFF

?音楽/アドルフ・アダン
原振付/ジャン・コラッリ、ジュール・ペロー
復元振付・演出/メアリー・スキーピング
監修/イルムガルド・E・ペリー
振付指導/内海百合(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
芸術監督/薄井憲二
協力/イングリッシュ・ナショナル・バレエ
指揮/渡邊一正
演奏/ロイヤル・メトロポリタン管弦楽団
舞台美術/妹尾河童
衣裳/緒方規矩子
照明/沢田祐二
舞台監督/森岡 肇
バレエ・ミストレス/大塚礼子、堀本美和、江川マヤ
制作担当/高田止戈
著作・制作/(社)日本バレエ協会