谷桃子バレエ団「Creative Performance VI」

2008.6.14 草月ホール


2of 2

Tani Momoko Ballet
CREATIVE PERFORMANCE VI

高部尚子 振付
「ライトモチーフ」
ダンス・スクエア:追う女、追われる男が登場して、「ノートルダムのせむし男」かなと最初思ったのですがどうも違うようですね。(笑)
高部尚子 :私の中では母と息子です

ああ!なるほど。あの尋常じゃな追いかけぶりがやっと納得いきました。(笑)
_親子の関係は生まれた以上、宿命的なもので断ち切ることの出来ないものです。守り・育てる・愛情を注ぐ、それを追いかけることで表現しました。

齊藤拓&永橋あゆみ
その愛情を負担に感じて息子(齊藤拓さん)は逃げる。
_ そうです。逃げられても 逃げられても母親(永橋あゆみさん)は当然のように追いかける。息子はそれに耐えきれず最後に向こうの(死後の?)世界に行く。死と捉えても母親の胎内に戻ると捉えていただいてもどちらでもけっこうです。最後に彼女が投げ入れる花は“彼自身”、そんなストーリーです。

投げ入れたのは“へその尾”と感じてもいいですね(笑)
_ラストでは 彼女自身が逆さまの体勢で生まれる瞬間を待っています。

輪廻まで感じさせて終わるわけですね。深い!(笑)
それにしても“母親と息子の関係”とは初振付に難しいテーマを選びましたね(笑)
_ジョン・ケージさんの曲を初めて聴いたときにいろんなイメージが湧いてきてそこから始まりました。観客の皆さんには「普通の男女の関係じゃないよね」と思ってもらえれば私としては成功です。

前回のインタビュー(2007.6.29配信)の最後に「尚子さんはお作りにならないいですか?」の質問に、「誰もが作れるわけじゃない。」と答えていらっしゃいます。

_(作品を創ることが)怖かったんです。
(しばらく考えて)やりたいことがあるんだったら挑戦して見るべきじゃないかと、ここ1〜2年で思うようになって......。でも、自分が思っていたよりも楽しい作業になって(振付挑戦を)やって良かったです。
ご自分が踊ることと他のダンサーに踊ってもらうことはまるで違うものですか?
_違いました。私がたずさわってきた振付の先生方のご苦心が初めて分かりました。(笑

言葉で伝える難しさですね。でも尚子さんは現役ですからご自分で踊ってみせたのですか?
_そうですね。でも言葉の方が多いかな。あまり説明しすぎるとイメージが固定されるような気もしますが、それ以上に私の作ったイメージ以上に膨らむことがとても楽しくて、嬉しくて

齊藤拓&永橋あゆみさんはベストキャストですね。
_“男性のもろさや女性の強さ”など、この二人でしか表現できないことがありました。感謝しています。
岩上純 振付
「KIZUNA」
1.CONTACT
ダンス・スクエア:始まりと終わりに全員のダンスがあって、その中に男女5組のパ・ド・ドウが挟まれている構成でした。
純 さんの今までの作品の中でもっとも様式美を感じました。このイメージは?

岩上純 さん:Rodorigo y Gabrielaの曲に出会って自然に湧いてきました。とても感情移入しやすい曲でしたので、振付を始めた時点にすでに5組のカップルの振付が出来ていたほどです。5組10人でひとつの社会を表現しました。
2.PASSION
近藤徹志 &広瀬万弥子
3.DISTANCE
川瀬美和 &三船元維
分かりやすくて楽しめるダンスでした。3.DISTANCEでは最後まで離れて踊るのが素敵でした。
_ラストで少し交差するんですけどね。(笑)遠距離恋愛の精神的なつながりを感じていただければ嬉しいです。

曲ごとの小タイトルがあるんですね。見終わってから拝見しましたがこれがなくても充分理解できました。2.PASSIONの恋愛関係になったばかりの“激情”や5.RAPPORTのおしりを掻きあうほどの親密な“関係”など楽しくて笑い通しでした。

_その2曲だけがAntonie Bufourの曲です。あえてストーリー性を意識せず見やすく作りたかったんですがタイトルには苦心しました。

4.OBSTACLE
依田久美子& 長清智
5.RAPPORT
中武啓吾& 瀬田統子
6.RECONCILIATION
樋口みのり& 今井智也
絆をあえてKIZUNAとしたのは?
_男と女の精神的なつながりを表現したかったので漢字にすると狭義に限定されそうで......。

6.RECONCILIATIONは 樋口みのり& 今井智也さんの実力派カップルでした。ライバルのようなカップルに見えたのですが、最後にお互いに頬の温度を確かめ合っているような シーンが印象的です。

_観客の皆さんにそれぞれのカップルのぬくもりを感じていただければ嬉しいです。
7.KIZUNA
STAFF
芸術監督:谷桃子
舞台監督:福島章
照明:足立恒
音響:矢野幸正
マネジメント/新演奏家協会