札幌舞踊会Xmas公演 Christmas Triangle
2016.12.9 札幌市教育文化会館 大ホール

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SAPPORO BUYOKAI
Christmas Triangle

 音楽はシチェドリン、カーメン・マクレーやピアノソロ、ビッグバンドなどを神村が選曲・コラージュ、象徴的に変化する映像は馬場がCGでなく、実際の現象、たとえば絵の具を液体の上に流してその動きを撮影して投影するという手法を使っています。それ以外にも抽象的な装置、場に意味を加える照明(松浦眞也)、抽象的なパターンの女性のボディタイツ、地位を象徴する男性の衣裳(井上博子他)などで舞台空間はひとつの動く現代美術作品化しています。
高岸直樹&郷 翆
 物語は主役の3人のAIの学習度、成熟度の進化による愛憎の関係の変化という形で進められます。子役や若いカルメンもその進化を示すのです。ホセはスニガに訓練されながら、進化するカルメンに懸命に愛を求めますが、さらに高度のAIをもったエスカミリオに翻弄され、影の男に操られてカルメンを破壊します。
高岸直樹/西野隼人
高岸直樹/郷 翆            小倉友梨香         西野隼人/刈田順也
 カルメンの郷は、長身、柔軟、かつダイナミックな動きと表現でよく役を描き出し、若きカルメン小倉もしっかり踊りました。ホセの西野はひたむきさの表現と高い技術で見せ、スニガの奥山も味を出していました。なかでも、長身の高岸のエスカミリオは抜群の存在感で他を圧していました。黒一色の影の男刈田も妖しさをみせ、カルメンの友人やAIの群舞、子役たちもよく役を果たしました。
刈田順也         郷 翆&西野隼人
 ただ、知能の学習度で3人の関係が変わるというテーマは、なかなか表現しにくいことも事実。むしろ、私見では、未来のカルメンというイメージからすると、AI化、ロボット化が進むことによって生じる格差、たとえば強者=カルメン、エスカミリオ、弱者=ホセと若いカルメンの代わりにミカエラ(郷里のホセの婚約者)、に焦点を当てた方が分かりやすくなったのではないかと思います。

 それはそれとして、構想の大胆さ、その実現手法の斬新さ、創造性、出演者の好演で、まれに見る刺激的な舞台でした。

2016年12月9日 札幌市教育文化会館大ホール所見

舞踊批評家 うらわまこと

STAFF
総合演出/千田雅子
照明/松浦眞也(ライディングデザイン プルーブ)
衣裳/井上博子、チャコット(株)、シルビア
音響/三好満冶((株)ほりぞんとあーと)
舞台監督/斉藤 玲 (株)御影
制作/奥山健恵 札幌舞踊会
主催/札幌舞踊会