NBAバレエ団「スターズ&ストライプス」
2016.12.3&4 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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NBA Ballet Company
Stars and Stripes

Stars and Stripes
振付/ジョージ・バランシン
ゲスト・バレエマスター/バート・クック
レッドソリスト:米津 萌
ブルーソリスト:浅井杏里
アメリカ、アメリカ

 最後の『Stars and Stripes』は1958年に初演された、ジョージ・バランシンの振付作品。タイトルの「星条旗」が示すように、いくつもの有名な行進曲で踊り続ける米国讃歌ともいえる作品だ。知ってのとおり、バランシンはロシアでバレエ・リュスの踊り手・振付家として活躍し、バレエ・リュス解散後、米国で活躍して米国のバレエ界に大きく貢献した。ブロードウェイでも振り付けている。

 人々を発奮させるスーザの行進曲は、これまで多くの祭典を彩り、スーザはあの『星条旗よ永遠なれ』も作曲している。ちなみに吹奏楽で低音を担当する背中に背負われた大きいラッパは、スーザが開発したスーザフォンである。
 この作品の面白さはまず群舞にある。バレエでは普通はソロで踊るテクニックの部分を敢えて群舞にして見せることで、重層的な面白さと強いエネルギーを生んでいる。特にそれは男性の群舞のパートに顕著で、このように男性が揃ってテクニックを見せる作品は稀だろう。特にそこがとても楽しめた。
メインカップル:竹田仁美、高橋真之
 この作品のなかで、メインカップルとして竹田仁美、二山治雄がパ・ド・ドゥを踊った。平山作品にも出た二山治雄は、見事な跳躍やスピード感のある動きで見せたが、二山のパ・ド・ドゥはこれからさらに伸びるだろうと思われた。
 この作品のスーザの音楽は、日本ではスポーツの祭典や学校の運動会を思わせるものだ。よく知ったマーチのリズムにバレエのテクニックが、実にさまざまに振り付けられて、思わず楽しく明るくなる作品だ。
だが、巨大な星条旗や派手な衣装などに、ドナルド・トランプの顔や、ベトナム戦争のアンクルサムのポスターなどが思い出されて、複雑な気持ちだった。移民の国の人々をまとめるには「強いアメリカ」の理想が必要なのかもしれないが、ロシアからの移民であるバランシンが、どう考えながらこの作品をつくったのか、とバレエ・リュスと米国のバレエについて、改めて想いを馳せさせる作品だった。

2016.12.4所見

舞踊批評家 しが のぶお

STAFF
芸術監督・演出/久保紘一
作曲/茂野雅道(Act02)
バレエミストレス/野田美礼
バレエマスター/西 優一、榎本晴夫、久保栄治
ゲストバレエダンサー/Bart Cook(Act03)、鈴木正彦

舞台監督/千葉翔太郎((株)スカイウォーカー)
舞台美術デザイン/杉山 至(Act02)
衣裳デザイン・衣裳/仲村祐妃子(Act01・03)、堂本教子(Act02)
照明プラン・照明/岩品武顕(彩の国さいたま芸術劇場)
音響プラン・音響/相馬保之
特殊効果プラン・特殊効果/(株)フェイカーズ
制作プロデューサー/高崎美佐江
主催/NBAバレエ団