2022都民芸術フェスティバル参加公演
(公社)日本バレエ協会「ラ・エスメラルダ」全幕
22.3.5&6 東京文化会館 大ホール

4of 4
Japan Ballet Association
「La Esmeralda」

川島麻実子&林田翔平
中家正博&米沢 唯
米沢唯/中家正博/遅沢佑介
川島麻実子 / 判事:岡田幸治 / 村山 亮 / 奥田慎也
道化:二山治雄 小山 憲
処刑されそうになるエスメラルダを救出するのは、原作ではカジモドの役どころだ。誰にもかえりみられなかった鐘守が、一転して民衆の喝采を浴びるくだりは、特にドラマチックな場面である。しかし本作ではヒロインを救う手柄をフェブに譲っている。原作同様フロロを殺すのはカジモドだが、ラストでエスメラルダに感謝されると静かに引き下がる。もはやカジモドが物語に必要な存在なのかも疑わしくなってくるが、奥田慎也の演じるカジモドはエスメラルダの分け隔てない優しさを映す鏡として、受け身の演技で存在感を示していた。他に、ダイアナ、アクティオン、クロパン、メゲーラに、根岸莉那、二山治雄、荒井成也、金田あゆ子が出演した。
道化:中村彩子 深山圭子 牧村直紀 小山 憲
村山 亮&川島麻実子
村山 亮&奥田慎也
米沢 唯&中家正博
新型コロナウイルスのパンデミックは、すでに2年以上にわたって続いており、バレエ界にも甚大な被害をもたらしている。1幕と3幕のセットのカミテ奥に描かれたノートルダム大聖堂は、2019年の大火事で尖塔が焼け落ちて、未だ再建工事中だ。さらに先月24日にはロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、この記事を執筆中の3月7日時点も、状況は悪化の一途を辿っている。恒例のオープニングトークが今年はキャンセルになったが、社会情勢の影響がなかったとは考え難い。劇場で素晴らしい舞台に、惜しみない拍手を送る日常が、いかに脆いものだったかを実感している。今が踊り盛りのダンサーたちを、できる限り見逃さないよう、静かな情熱とともに劇場に通い続けてゆきたい。

2022年3月6日13:00 東京文化会館

すみだ・ゆう=舞踊批評家

林田翔平&川島麻実子
STAFF
原振付:ジュール・ベロー
音楽:チェーザレ・ブゥニ、リッカルド・ドリゴ他
復元振付・演出:ユーリ・ブルラーカ
振付補佐:フョードル・ムラショフ
バレエミストレス:佐藤真左美、角山明日香

総監督:岡本 佳津子
照明:沢田 祐二
舞台監督:森岡 肇
音響:矢野 幸正(アートスタジオY’s)
衣裳スタッフ:タウン・ステージ
舞台スタッフ:東宝舞台株式会社
ロシア・コーディネーター:ドミトリー・トカチェンコ
制作担当:本多 実男
制作補佐:前田 藤絵、江藤 勝己
著作・制作:公益社団法人 日本バレエ協会