2022都民芸術フェスティバル参加公演
(公社)日本バレエ協会「ラ・エスメラルダ」全幕
22.3.5&6 東京文化会館 大ホール

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Japan Ballet Association
「La Esmeralda」

メゲーラ:金田あゆ子  クロパン:荒井英之

隅田有のシアターインキュベーター

日本バレエ協会『ラ・エスメラルダ』全幕

バレエ『ラ・エスメラルダ』はジュール・ペローの振付で1844年にロンドンで初演された。原作『ノートルダム・ド・パリ』をヴィクトル・ユゴーが1831年に発表してからわずか13年後、ユゴーが台本を書いたオペラ『ラ・エスメラルダ』の初演から約7年後である。踊りの上手い魅力的なロマの娘と、身体に特色のあるアンチヒーローの組み合わせは、バレエという表現手段と相性が良いのだろう。プティパを含む様々な振付家が本作を手がけており、今回の上演は2009年から2011年までボリショイ・バレエ団で芸術監督を務めたユーリー・ブルラーカによるプロダクションだ。初日を米沢唯と中家正博が、2日目のマチネを川島麻実子と林田翔平が、ソワレを白石あゆ美と橋本直樹が、それぞれエスメラルダとフェブを務めた。2日目のマチネの様子を報告する。

グランゴワール:キム・セジョン
グランゴワール:木下嘉人
エスメラルダ:米沢 唯
エスメラルダ:川島麻実子
ノートルダム寺院にほど近い、貧しい者たちが集う広場を舞台に、キャラクターダンスを中心とした賑やかな場面で始まる。カラフルな衣装の出演者の中に、純白のドレスに赤いショールを巻いたエスメラルダが颯爽と登場する。コケティッシュだが品があり、主役にふさわしい華と繊細さを併せ持つ川島にとって、本役はまさに当たり役だった。
体のポジションや顔の向きにブレがなく、女性ダンサーとしては圧倒的な跳躍力がある。基本となる動きの完成度が高いだけに、必要に応じて少しだけ力を抜く上半身や、強調するタイミングでわずかにはみ出す音の使い方が、抜群の効果を上げていた。一つ一つのパの面白みを最大限に引き出して、鮮やかに役柄に結びつけてゆく。テクニックの難所はもとより、パ・ド・ブレにも拍手が湧き、2幕コーダのエシャペで観客の心を震わせた。

川島は若手の頃からキラリと光るセンスがあったが、どこか遠慮がちな一面もあった。しかし本公演ではかつてなく大胆に、ヒロインの喜びも悲しみも余すところなく表現していた。テクニックと芝居の両方において、期待をはるかに上回る舞台だった。

フロロ:遅沢佑介&カジモド:奥田慎也
米沢 唯&フェビュス:中家正博
川島麻実子&フェビュス:林田翔平
米沢 唯
キム・セジョン&川島麻実子
川島麻実子