森田友紀バレエ45周年記念公演「ラ・シルフィード」全幕
2019.9.1 アクトシティ浜松 大ホール

2of 2
Yuki MoritaBALLET
La Sylphide

マッジ:尾上有紀子
魔女達: 浅井敬行、野々山 亮、吉岡真輝人、吉野壱郎
 そして第2幕。マッジはジェイムズに復讐するため、薄布に魔法をかけ、森に来たジェイムズにこれでラ・シルフィードを抱き留めろとそそのかします。多くのシルフィードたちのなかでの愛の踊り、そして彼はラ・シルフィードを逃さぬようにベールで包み込みます。すると背中の翅は取れ、同時に彼女は息を引き取ってしまいます。彼女を抱えて悲しみに暮れるジェイムズ。

 この作品では、まず踊りと同時に芝居の部分が極めて大きな意味をもつこと。これをバレエ・ダクション(演劇的バレエ)といい、これはクラシックバレエに対するロマンティックバレエの本質です。そしてブルノンヴィルのスタイルは、上半身、腕の角度、そして爪先の細かい動きに特徴があります。

妖精達: 丸地利沙、尾上真梨花
 演出/振付の森田友紀さん、友理さんは、この作品の本質をしっかり生かして舞台を組み立て、さらに友理さんはもともと「白いバレエ」がよく似合いますが、ここでもシルフィード(空気の精)として、その軽さ、はかなさ、そして少しのいたずらっ気とともに愛する女性の面もていねいに描き出し、踊りに、演技に、タイトルロールとしての役目を果たします。

 ジェイムズの金甫燕さんも、婚約者がありながら妖精に惹かれてゆく男の不合理な行動と、そこから生じる結末をしっかり表現。第2幕、友理さんとのパ・ド・ドゥも見せ場を作りました。

金 甫燕
 特筆はマッジの尾上有紀子さん。状況を示した音楽によって、悲劇の引きがねを引く汚れ役を印象的に演じました。婚約者への不安に心が騒ぐエフィの高山礼渚さん、彼女を密かに愛し、最後に結ばれるグァーンの長谷川元志さんもよく役を演じ、若い出演者が多いなかで、母親の本田愛理さんが舞台に厚みを加えていました。
金 甫燕&森田友理
 また、浅井敬行さんはじめゲストの男性たちは演技とともに踊りでも見せ、若い女性ダンサーたちも健闘、第1幕は人間として、そして第2幕では妖精たちとして、しっかりとこの特徴的な動きに挑戦、成果をあげました。

 さらに。この作品の一つの要点である、シルフィードの消滅、浮遊。そして翅の自然な脱落などの工夫もあり、美術、装置もきちんとして、東京でもめったに見られないブルノンヴィルの趣をよく伝えました。

 この作品の前に上演された『人形の情景』。バイアーの音楽(「フェアリードール」)をアレンジ、コロンビーヌ、ハレーキン(平野心、樋渡マリアさん)に率いられた人形たちの深夜の冒険。「舞込んだ小鳥達」の大勢の幼児はじめ、若いダンサーたちがロシア、フランスなど、いろいろな国の踊りを楽しそうにみせました。

2019年9月1日アクトシティ浜松・大ホール所見

うらわまこと=舞踊批評家

森田 友紀氏

人形の情景

店主:河嶋優里、吉岡真輝人
ハレーキン:樋渡マリア &コロンビーヌ:平野 心
STAFF

演出・振付/森田 友紀、森田 友理
舞台監督/小島慎一郎
照明/若尾綜合舞台
音響/オルフェオ
舞台装置/MSU

総監督/ 森田 友紀