森田友紀バレエ45周年記念公演「ラ・シルフィード」全幕
2019.9.1 アクトシティ浜松 大ホール

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Yuki MoritaBALLET
La Sylphide

ジェイムズ:金 甫燕&ラ・シルフィード:森田友理

演出/振付に出演者がよく応え、
ブルノンヴィルバレエの特徴を表現

うらわ まこと
 バレエには同じ物語に基づき、同じタイトルで、しかし内容の違う作品がたくさんあります。

 たとえば、『ロミオとジュリエット』。もとは有名なシェイクスピアの戯曲ですが、それをバレエ音楽として作曲したプロコフィエフの曲で、多くの振付者が、それぞれ独自の考えでバレエ化しています。ソ連(ロシア)のゴルスキー版、ドイツのクランコ版、英国のマクミラン版などは現在も上演されていますし、わが国でも松山バレエ団の清水哲太郎版はじめ多くのバレエ団が自前の『ロミ・ジュリ』をもっています。

 少し別のケースとしては、原作は有名なものからとりますが、音楽は振付者が自分で選んで振付けたもの。たとえば、原作はアンデルセンの有名な『人魚姫』。これも音楽はいろいろで、ミュージカル(『リトル・マーメイド』)なども含め、多数あります。

金 甫燕 /エフィ:髙山礼渚/アン・ルービン:本田愛理
 さらに、バレエのために作られた同じ台本で、2人の振付者が、それぞれ新たに作曲した音楽によって同じ題名の別の作品を作ったという珍しい例があります。
 それが『ラ・シルフィード』です。もとは、ロマンティックバレエ時代を代表する舞姫マリー・タリオーニのために、その父フリッポ・タリオーニが振付けた、いわゆるタリオーニ版(原作シャルル・ノディエ、1832年、パリ初演)。音楽はシュナイツフォーファー。それを見たデンマークのオーギュスト・ブリノンヴィルが、同じ原作で新たにロヴェンショルドに作曲を依頼し、振付けたものが、いわゆるブルノンヴィル版(1836年、コペンハーゲン初演)です。
髙山礼渚 /マッジ:尾上有紀子/グァーン:長谷川元志
 これは、人間と妖精(シルフィード=空気の精)の愛の悲劇を描いた、ロマン主義の雰囲気あふれたもので、このころに開発されたバレリーナの爪先立ちを可能としたトウシューズの効果によって、大変な評判となりました。ただ、タリオーニ版はその後上演が途絶えてしまい、上演が続けられているブルノンヴィル版が、初演に近い形で残っている世界最古のバレエといわれています。なお、現在は、1972年にまずTVのために作られたパリ・オペラ座のピエール・ラコット版が、タリオーニ版を継承したものとして上演されています。

 ちなみに『レ・シルフィード』は、ショパンの曲にミハイル・フォーキンが振付けた、物語のないバレエで、ずっと後(1908年)に作られたものです。

 さて今回、森田友紀バレエ研究所の第45回記念バレエ・パフォーマンスで、この『ラ・シルフィード』が上演されました。音楽はロヴェンショルドで、ブルノンヴィル版に基づいています。

 スコットランドの青年ジェイムズは、エフィと婚約が決まっていますが、彼を愛するラ・シルフィードに心を奪われています。悩むエフィ、一方、彼女に心を寄せるグァーン。そこに魔法使いの老婆マッジが現われ、手相占いを始めますが、ジェイムズは彼女を嫌い、不吉な予言を聞いて外に叩き出します。家族や友人たちとの婚約発表の踊りが始まりますが、ジェイムズは、そこに紛れ込み彼を誘って消えたラ・シルフィードを追って森へ向かいます。混乱する一同、悲しむエフィ。 

森田友理& 金 甫燕
村の青年:浅井敬行、野々山 亮、吉岡真輝人、吉野壱郎
エフィの友人:丸地利沙、河嶋優里、尾上真梨花、樋渡マリア、小栗瑠衣
長谷川元志/髙山礼渚/本田愛理