DANCE for Life 2019
篠原聖一バレエ・リサイタル
2019.6.7 練馬文化センター 小ホール

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DANCE for Life 2019


Charlie(2019 ver.)
音楽/チャールズ・チャップリン 他

篠原聖一
休憩を挟んだ第二部は、『Charlie』。「DANCE for Life」第一回目から何度か上演しているチャップリン・シリーズの2019年ヴァージョンだ。化粧ケースを手にした篠原が舞台中央に客席に向かって腰掛ける。目の前に鏡があるかのように、息を吹きかけ手でこする。眉を書き、ちょび髭も。チャーリー・チャップリン仕様の化粧の仕上げ。「ちゃんと描けてます?」と観客に声をかける。舞台袖に一旦入り、本格的に作品スタート。
大長亜希子/香野美佳 /篠原聖一 /大山裕子 /菅原梅衣
だぼだぼパンツにちょび髭、黒い帽子とステッキ、そして大きな靴、ひょこひょことした独特の歩き方。チャーリー風の篠原を中心に、チャップリン映画の音楽で場面が展開してゆく。花束を手にした少女たちの踊りは可愛らしく、戦闘服にヘルメットという姿での「匍匐(ほふく)前進」もコミカルなダンスとなっていた。そこには銃声も聞こえるようだ。やがて戦闘服を舞台に脱ぎ捨て、少女たちは去る。戦争ごっこ?いや「ごっこ」などではない。舞台上に残った戦闘服とヘルメットは、屍体にも見える。ヘルメットに花をさすのは弔いか。手紙(訃報だろう)を読み、泣き崩れる篠原に少女たちは、スマイルを促す。
荒井英之、川村海生命、風間無限
篠原聖一
金子 優& 篠原聖一
反戦、というメッセージを舞台から感じたのも束の間、水着姿の男性たちのナンセンスなダンスにアロハシャツ姿の篠原も加わる。子供連れの美しい未亡人と出会うと、元の黒服に着替え、彼女を慰める。ラストは子供とともに三人で歩んでいくー。
小出士道
「イケメン」、というよりもっと正統派の、端正な美男子である篠原はチャップリンには似ていない、というのが初演時からの評判である。同感だ。ただ、篠原は、チャップリンを単に真似しているわけではないのだろう。あの扮装をし、ユーモアたっぷりに、しかし、社会批判(反ナチスの「独裁者」、機械文明批判の「モダン・タイムス」など)をした、「Charlie」という名の実在の人物への共感ゆえの、チャップリン・シリーズではないかと思う。

と、シリアスに考察していると、「オヤジはなぜオヤジギャクを言うのか?」「脳にブレーキが効かないから」「ノーブレーキ」などのセリフ(素顔の篠原は、オヤジ・ギャグの名手ではある)で見事に混ぜっ返されてしまったのだが。
                          

2019.6.7 練馬文化センター 小ホール所見

舞踊評論家 さくらい たかこ

STAFF
芸術監督・監修・演出・振付/篠原聖一
バレエミストレス/下村由理恵
照明/足立 恒
音響/中村蓉子
大道具/東宝舞台(株)
舞台監督/森岡 肇
制作/Dance in Deed!