(公財)井上バレエ団7月公演「シルヴィア」
2019.7.20&21 文京シビックホール 大ホール

2of 2
NINOUE BALLET 
Sylvia

檜山和久 &源 小織
源 小織 &浅田良和
エロス:越智ふじの
第三幕は、ディアナの神殿。ここにも北欧神話の雰囲気が感じられ、セットにはルートヴィヒ1世が建てた、ヴァルハラ神殿のおもむきがある。オリオンとアミンタが対決しているところにディアナが現れ、オリオンを矢で打ち追い払う(オリオンがアルテミスに殺されるという設定は、ギリシャ神話と同様のようだ)。
ディアナ:福沢真璃江
長清 智、辰巳一政、持田耕史、佐藤祐基、愛澤佑樹、田辺 淳
6組の男女による踊りから、プティパのスタイルを使った主役二人のグラン・パ・ド・ドゥへと続く第三幕は、ディヴェルティスマンが見所だ。テクニックの見せ場が多いのはアミンタで、荒井が振付を崩さず最後までしっかりと踊った。田中はコーダの連続のパッセなどで、一幕にはない貫禄を醸し出していた。
越智ふじの
石井竜一は、2011年に始まった井上バレエ団《アネックスシアター 次世代への架け橋》シリーズで、第一回から作品を発表してきた。昨年春の公演では、世阿弥の『班女』をもとに、登場人物の心理を掘り下げた同名の作品を振り付けている。本作でも主役から脇役まで、それぞれのキャラクターがしっかりと描かれていた。
友人たちのワルツ
阿部真央、矢杉朱里、中堀菜穂子、阿部 碧、井上 愛、齊藤絵里香
長清 智、辰巳一政、持田耕史、佐藤祐基、愛澤佑樹、田辺 淳
第二幕では、オリオンの侍女がシルヴィアとアミンタの脱出を手助けしたり、第三幕ではディアナが恋人たちの交際をあっさりと認めて寿いだりと、揉め事は最小限。敵役のオリオンですら憎めないキャラクターで、「悪い人が一人も登場しない」という設定も、本作の大きな特徴だろう。台本をあれこれとひねるのではなく、踊りやマイム、そして幕ごとにメリハリのある演出など、バレエ本来の面白みを大切に作られていた点が素晴らしい。全幕バレエの新制作という井上バレエ団の“挑戦”に大きな拍手を送るとともに、今後も本作がバレエ団に愛され再演を重ねていくことに期待したい。

2019年7月14日 文京シビックホール所感

すみだ・ゆう=詩人/舞踊批評家

STAFF

構成・演出・振付/石井竜一
美術/大沢佐智子
音楽監督/冨田実里
衣裳/西原梨恵
バレエミストレス/鈴木麻子、大島夏希
指揮/冨田実里
演奏/ロイヤルチェンバーオーケストラ
照明/立川直也(満平舎)
舞台監督/相馬勝己(相馬舞台研究所)
音響/貫井政仁(N-1)
衣裳/(株)柊舎
公演監督/岡本佳津子
制作/公益財団法人 井上バレエ団
諸角佳津美(統括)、石沢恵美、宮路昌美