東京シティ・バレエ団  "セリフ付き"「ジゼル」(全幕)
2019.5.26 ティアラこうとう大ホール

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Tokyo City Ballet
Giselle

アルブレヒト:福田建太 ウィルフリード:吉岡真輝人
ジゼル:斎藤ジュン
斎藤ジュン&福田建太
クーランド公:春野雅彦 ベルタ:加藤浩子 バチルド:小林あおい

隅田有のシアター・インキュベーター

言葉を使わないことが大原則のバレエに、あえてセリフをつけて上演するという、型破りな試みである。初心者にバレエを楽しんでもらうのが目的だ。昨年の『白鳥の湖』につづき、今年は『ジゼル』が上演された。2016年入団の斎藤ジュンと、昨年末の『くるみ割り人形』で爽やかな踊りを見せた福田建太が主演。朗読はプロの声優陣が生出演し、ジゼルに中村繪里子、アルブレヒトに濱野大輝ほか、総勢12人が舞台シモテ前方と、二階のシモテバルコニーに並んだ。
斎藤と福田は共に今回が初役で、振付を丁寧に踊る姿に好感が持たれた。斎藤は飾り気のない村娘らしさがあり、一幕のバリエーションや、二幕の王子との邂逅の場面での、アラベスクのラインが美しい。福田は二幕の体力的にハードな場面でも、プリエを意識し辛抱強く踊っていた。

ヒラリオンの浅井永希は影のある役作りだが、一幕ラストや二幕のウィリに捕まる場面で見せた、膝をついて腕を広げるポーズが情熱的。的を絞って感情を強く表す演技が効果をあげ、作品を大いに盛り上げた。ミルタの清水愛恵やクールランド公の春野雅彦など、ベテラン勢が脇を固め、ペザントに飯塚絵莉と土橋冬夢、ドゥ・ウィリに平田沙織と植田穂乃香が出演した。
ペザント:土橋冬夢&飯塚絵莉
斎藤ジュン 小林あおい
声優陣の朗読はダンスにピタリと合っていて、プロの実力と生の迫力を実感した。ダンサーの個性と、声の印象に開きがあったが、そこは致し方ないのだろう。台本は会話が主で、心情を説明するセリフは必要最小限に留められていたのが好ましい。それでもダンスと、極めてエモーショナルな音楽に、さらに言葉が加わると、どうしても情報量が過剰になってしまう。ムーヴメントにもセリフにも集中できない場面が多々あった。また、セリフが付くことで、狂乱に至るジゼルの心情が、むしろ追いにくく感じられたのは意外であった。