篠原聖一バレエ・リサイタル
「ロミオとジュリエット」全2幕
2017.10.1  メルパルクホール

2of4
DANCE for Life 2017
Romeo and Juliet

乳母:江川マヤ              キャピュレット夫人:竹澤 薫
ティボルト:沖潮隆之          パリス:逸見智彦
本作は振付にユニゾンが効果的に使われている。序盤、運命とロミオが同じ振りを踊るシーンでは、ロミオの行動や選択が、運命の手に握られていることが暗示される。一幕最後のバルコニーのパ・ド・ドゥでは、踊り始めたロミオにジュリエットが加わる場面がある。まるでロミオの運命にジュリエットが組み込まれた瞬間を見るようで、直後の口づけがより意味深いものになった。ティボルトを殺したロミオの追放が決まり、ジュリエットと別れる直前に踊る寝室のパ・ド・ドゥでは、カミテ前方で踊るジュリエットのステップにロミオが続く。運命に立ち向かうジュリエットの意思と決断が、後半のストーリーを展開させていくことの暗示だろうか。
ロミオ:今井智也 ジュリエット:下村由理恵
下村由理恵/浅田良和/今井智也                      沖潮隆之
下村は前半、よく笑う少女のように軽快に動き回り、パラレルの足で正面を向く姿勢に、子供らしい無防備さがあった。物語が進むにつれて、瞬く間に女らしく成長する。望まない結婚を迫る両親からの叱責に耐えかねて、一人泣き崩れる場面では、腹部を中心に上半身を大きく揺らし、まるで嗚咽が聞こえるようだった。今井のロミオには勢いがあると同時に、力まずにバランスよく回るピルエットには穏やかさも感じられた。
今井智也 &下村由理恵
運命の佐々木は、他の出演者が感情を発散させる中、一人抑制の効いた踊りで存在感を示した。二幕ではシモテ後方の階段に座り、冷ややかに決闘を眺める。運命がわずかに身を乗り出すだけで、舞台に緊張感が走った。
マキューシオの浅田良和は独特の軽薄さがあり、沖潮隆之のティボルトはシラフでも血の気が多い。ジプシーの荒井英之、大長亜希子、平尾麻実、粕谷麻実が気っ風の良い踊りで街のシーンを盛り上げ、12名の子供たちがマンダリン・ダンスの音楽で踊った。僧ロレンスに桝竹眞也、パリスに逸見智彦、乳母に江川マヤ、キャピレット公に小原孝司、キャピレット夫人に竹澤薫、モンタギュー公に田名部正治、モンタギュー夫人に鶴見未穂子、大公に佐藤崇有貴など豪華キャストが揃い、ベテラン勢の芝居がドラマをキリっと引き締めた。
《DANCE for Life》は早くも来年、第11回が開催されるという。次回はノートルダム・ド・パリをもとにした『AN'AΓKH』。ギリシャ語で「宿命」を意味するそうだ。人間ドラマを伝える本シリーズは、この先も太く長く続いて行くだろう。

2017年10月1日 メルパルクホール所見


すみだゆう(詩人/舞踊批評家)