2019都民芸術フェスティバル参加公演
(公社)日本バレエ協会
「白鳥の湖」全幕
2019.2.9&10 東京文化会館・大ホール

3of 5
Japan Ballet Association
Swan Lake

小さな白鳥:染谷知香、渡久地真理子、長尾美音、渡辺 幸
榎本祥子、岡井 萌、酒井友美、平野そよ香
通常『白鳥の湖』に王子の父は登場しない。ピーター・ライト版ではプロローグに前王の葬儀が挿入され、はっきりと父の不在が示される。なかでウラジーミル・ワシーリエフ版は、王が登場する珍しい版だ。王の裏の顔がロットバルトという演出で、後半は父子対決となる。”空席”となっているジークフリートの”父”のポジションにロットバルトをはめた篠原版はワシーリエフ版に近いが、篠原版の王子はロットバルトとの対決も早々に切り上げ、オデットの後を追って湖に身を投げてしまうのである。
清水あゆみ、染谷知香、渡久地真理子、長尾美音
大きな白鳥:浦山英恵、佐々木夢奈、寺澤梨花、中村彩子
岩根日向子、大木満里奈、大山裕子、吉田まい
高橋真之
道化:池本祥真
荒井英之
花嫁候補:岩根日向子、榎本祥子、大塚彩音、小野麗花、栗田陽南、斎藤ジュン、野澤夏奈、馬場 彩
もとは人間だったという設定や、超人的な力を得る場が教会の敷地内である点から、篠原版のロットバルトはキリスト教的な”悪魔”というよりも、アメリカンコミックなどに登場する”ヴィラン”の系譜と解釈するとしっくりくる。通常ヴィランはヒーローの敵役として登場するが、オデットも王子もヒーローというよりは、ロットバルトの策略に翻弄される被害者だ。篠原版『白鳥の湖』をヒーロー不在のヴィランの物語として読み解くと、そこに現代の世相が反映されていることに気づかされる。エンディングで恋人たちは宙乗りで抱き合いながら登場し、空高く舞い上がってゆく。ロットバルトは自らの創造物である白鳥たちに殺され、オディールも再び命を落とす。オデットと王子があの世で結ばれることが示唆される結末には救いがあるが、若い二人がこの世に希望を捨ててしまったということも、しっかりと心に留めておきたい。

2019年2月10日マチネ 所感

すみだゆう(詩人/舞踊批評家)

オディール:佐々部佳代
オデット:木村優里&秋元康臣/オディール:木村優里/高比良 洋/王妃:深沢祥子
スペイン:大木満里奈、大山裕子、染谷知香、五十嵐耕司、川村海生命、ジョン H.リード
スペイン:亀田晴美、テーラー麻衣、中村彩子、江本 拓、貫渡竹暁、米倉佑飛