2019都民芸術フェスティバル参加公演
(公社)日本バレエ協会
「白鳥の湖」全幕
2019.2.9&10 東京文化会館・大ホール

2of 5
Japan Ballet Association
Swan Lake

オデット:佐々部佳代
オデット:木村優里
道化の池本祥真は、序盤から舞台狭しと踊り、高いテクニックで観客を惹きつけた。難易度の高いパも、常にクラシックバレエのポジションに立ち戻り、ごまかしがないのが素晴らしい。カーテンコールではひときわ大きな拍手が送られていた。


脇を固める出演者は、オーディションによって選ばれたダンサーたちだ。踊りのスタイルは様々だが、プリエで溜めたところから素早く音に乗るなど、全体的に動きに統一感が感じられた。コール・ド・バレエも重要な見所の一つ。四幕冒頭、円形に床に伏した白鳥が一人ずつ立ち上がり、舞台前方が頂点の三角形を形成していく場面は、フォーメーションの美しさが一段と引立った。

ジークフリート:厚地康雄&オデット:佐久間奈緒
篠原はこれまでにも、全幕バレエ作品に独自の解釈を加えて、ドラマチックに蘇らせてきた。登場人物の行動を丁寧に掘り下げて、物語の「なぜ」に迫る手法は、本作にも共通する。篠原版『白鳥の湖』の特色は悪役ロットバルトのキャラクター設定だ。娘を愛する父親であった男爵が、悪の道に堕ちる様子をプロローグに加えた。

ロットバルト男爵は愛する娘オディールの将来の伴侶には、幼少より高貴の誉れ高いジークフリード王子と思い決めていた。
しかしながら咲き誇るばかりに美しく成長した17歳のオディールは悪性の流行り病で命を落としてしまう。
ロットバルト男爵は絶望の深い淵に沈み、黒い十字架に自らの命を預けて悪魔となり、同じ歳の娘たちを白鳥におとしめ、今ここに愛娘オディールの蘇りを祈り続ける。
(プログラムより)

オデット:佐々部佳代&ジークフリート:井澤 駿
オデット:木村優里&ジークフリート:秋元康臣
佐々部佳代
ここで注目したいのは、ロットバルトがジークフリートの成長を長年見守ってきたという点である。成人の宴が終わり、王子が湖に向かった後、ひと気の消えた城の中庭に、早くもロットバルトが登場する。勝手知ったる振る舞いのロットバルトは、これまでも自由に城に出入りし、密かに王子のそばにいたのではないだろうか。他の演出と異なり、ロットバルトは王子のことを敵視していない。ゆがんではいるものの、将来の婿として、まるで父親のような愛情を持って接しているように感じられた。
木村優里