2019都民芸術フェスティバル参加公演
(公社)日本バレエ協会
「白鳥の湖」全幕
2019.2.9&10 東京文化会館・大ホール

1of 5
Japan Ballet Association
Swan Lake

道化:池本祥真

隅田有のシアターインキュベーター

 強い寒気の影響で、都心にうっすらと雪が積もった三連休の週末、日本バレエ協会の公演が開催された。今年の演目『白鳥の湖』は、都民芸術フェスティバル参加公演としては上演回数が最も多く、1974年の小牧正英版から数えて10回目。近年では2006年にドゥジンスカヤ/ホームズ版、2013年にゴルスキー版を上演しており、篠原聖一版は初となる。全3公演の2日目マチネの様子をレポートする。
ヴォルフガング:小林貫太
ワルツ(ソリスト)
秋山風薫、飯塚瑞月、小野麗花、金海汐美、金海怜香、酒井友美、佐々木夢奈
芝原美結、清水美帆、須貝紗弓、寺澤梨花、山内綾香
ワルツ(ソリスト)
石井徳一、草薙勇樹、栗原 柊、小山 憲、竹本悠一郎、貫渡竹暁
王妃:楠元郁子&ジークフリート:井澤 駿
オデット/オディールに佐々部佳代、ジークフリート王子に井澤駿、ロットバルトに高岸直樹が出演した。佐々部は出演者の中でも一段と華奢で、身をよじって嘆く姿にオデットの悲しみの深さが表れる。鳥の羽ばたきを模した腕の動きは、白鳥と黒鳥で使い分けの工夫があった。柔らかさが意識された白鳥は、肘や手首を曲げる角度が大きく、時おりシルエットが小さく縮んでしまったのが惜しい。一方、より大胆に羽ばたく黒鳥は、溌剌とした魅力に溢れていた。
ジークフリート:厚地康雄
パ・ド・トロワ:寺田亜沙子、平尾麻実、江本 拓
パ・ド・トロワ:清水あゆみ、渡久地真理子、吉瀬智弘
パ・ド・トロワ:奥田花純、斎藤ジュン、田辺 淳
ロットバルト:ソン・イ
ロットバルト:高岸直樹
井澤は着地を意識した丁寧なステップで、ひと皮むけた踊りを見せた。一幕のラスト、湖に向かう前のソロでは、音に早く乗る部分とたっぷりと見せる部分を織り交ぜて、揺らぐ胸の内を表す。篠原作品らしい音の取り方が効果をあげていた。二幕のアダジオでオデットを背後から抱擁する際は、佐々部との身長差をうまく利用し、感情を込めて抱きしめるなど、振付の中に既にある素材を生かして、演技に繋げることに成功していた。

高岸は持ち前の華と存在感を発揮し、悪役を生き生きと演じた。後述するが、ロットバルトは本作のキーパーソンである。かがんだ姿勢から見上げるようなポーズが、悪役の計算高さを思わせる。三幕の終盤、企みにボロが出ると、やはり下から見上げる角度で、取り乱した王子に説得を試みる。押しの強さと胡散臭さを同時に示し、幕切れを大いに盛り上げた。

ロットバルト:高比良 洋
オデット/オディール
ジークフリード
ロットバルト
2/9
佐久間奈緒
厚地康雄
ソン・イ
2/10マチネ
佐々部佳代
井澤駿
高岸直樹
2/10ソワレ
木村優里
秋元康臣
高比良洋