ICHIBANGAI-Dance Studio-
「Performance Vol.3 2018」
2018.5.18&19 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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ICHIBANGAI-Dance Studio

「踊り踊りて あの世まで…」
振付 加賀谷 香 近藤良平
 そして休憩、ところが開演前にロビーからアコーディオンを持った近藤良平と、笛をくわえた加賀谷香が客席に入り、そこでいろいろと観客に話しかけ、まだ踊る気になれないなどと笑いをとりながら、ようやく舞台に上がり、踊り始めたのが『踊り踊りてあの世まで…』(共作)。
加賀谷 香&近藤良平
 日常的な動きを含めながら、2人でさまざまに組み合います。近藤としては珍しい女性を支えたり、持ち上げたり、運んだりのパ・ド・ドゥ。自分達も楽しみながら観客も楽しませる、近藤良平らしい世界。加賀谷もよく対応していました。彼女はその衣裳のまま、次の自作、詩人谷川俊太郎の『除名』に想を得た『JO-MEI』に入っていきます。

「JO-MEI」
谷川俊太郎「除名」より着想
作 加賀谷 香
加賀谷 香
青山 萌、伊海さえ子、今泉理沙、武安由宇里、鶴田ふみ代、中原百合香、中村瑞乃
中谷眞弓、根本なつき、湯川沙代
 彼女はカミテ奥、黒のストローハットを被り、シモテ側の10人ほどの集団と対峙しますが、じょじょに上から白いストローハットが落ちてきます。集団はミニマルな音楽、動きも個や小グループなどの集散が主体、そしてテキスト風に谷川の言葉が語られ、加賀谷も集団に参加、そして皆ハットを被ります。変化する照明も加えて、彼女の谷川の詩に触発された心象が見えてきます。


「Double Dealings-裏と表・二つの心-」
振付 坂本登喜彦
糸井千加子、小川しおり、奥山あかり、金海怜香、木村美那子、小林翔子、佐藤瑠華
澤田 夏、比嘉 萌、真鍋明香里、宮川果穂、吉岡玲子
 坂本登喜彦の『Double Dealings--裏と表・ニつの心--』。とくにゲストを加えずスタジオのメンバー、女性12名がブルー系とブラウン系の衣裳に分かれ、ラフマニノフのピアノコンチェルトで裏と表交互に、そして混じり合うシンフォニックバレエ。曲想により強く、柔らかく、そしてシンプルに複雑にと、うまくダンサーを動かし、出演者もよくそれに応えました。

「RITE-儀式-」
振付 二見一幸
田保知里、池田美佳、中村真知子、佐々木紀子、小林啓子、大野木純子
長谷川真奈美、清水揚子、遠藤 恵、片山葉子、岡 千春、荒俣夏美
前田麻緒、高橋麻記、服部千尋、上野可南子
佐藤洋介、森川次朗、西澤光時、二見一幸
 再び二見一幸作品『RITE--儀式--』。中村真知子・佐藤洋介、池田美佳・森川次朗の組み合わせをクローズアップし、さらに田保知里、佐々木紀子、それに二見自身も長いソロをみせるなど、経験豊富な顔触れが加わった全20名の大集団。動きもインサイドに身体をくねらすのですが、たとえば粘っこくつながる柳本の動きと比べると、こちらの方は強弱がはっきりとダイナミックといえるでしょう。このような動き、縦横のフォーメーション、集散による空間構成によって彼独特の儀式観が展開します。
 フィナーレはサンバのリズムで全員が賑やかに登場、構成は柳本。率直にいってここでの出演者の雰囲気からは、少々発表会的な感じがしないでもありません。しかし、振付者たちはここの劇場のもつ空間や設備を十分に活用し、出演者もよく訓練されており、全体として見所の多い舞台となっていました。

うらわまこと=舞踊批評家

彩の国さいたま芸術劇場大ホール 5月19日夜所見 


STAFF
舞台監督/猪俣康徳、川原卓也、佐伯美佳
照明/加藤 学
音響/貫井政仁、入倉幸司