ICHIBANGAI-Dance Studio-
「Performance Vol.3 2018」
2018.5.18&19 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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ICHIBANGAI-Dance Studio


 ICHIBANGAI-Dance Studio-の公演は今回第3回ですが、このスタジオには長い歴史があります。創始者は小川亜矢子、もと小牧バレエ団のソリスト。独立して自分のスタジオをもち、1980年代から、麻布のスタジオ一番街で、初心者だけでなく、経験者を集めて指導し、スタジオ・パフォーマンスを始めました。それが2か月に一度のサンデー・パフォーマンス。ここで彼女の新作が発表され、『野火』などの名作が生まれました。また現在TVドラマでよく知られる床嶋佳子など多くのダンサーがここから巣立っています。

 残念ながら、このスタジオは1997年に閉鎖され、青山のベル・コモンズに場所を移して、青山ダンシング・スクエアとして再スタート、バレエだけでなく広くコンテンポラリー、ジャズなども教えるようになり、ここでもスタジオ・パフォーマンスを続けました。

 そして、2015年1月に小川亜矢子が他界、その年の7月に新しく現在地(新宿御苑前)にスタジオをオープン、坂本登喜彦、二見一幸らが中心になり、多くの教師によって運営されています。それがこの[ICHIBANGAI-Dance Studio-]です。

今回は、教師たちの振付、主演に、ゲストを加え、多くのスタジオ生が出演しました。8つの小品と『Finale』、休憩を挟み、3時間を越える長丁場。

Opening
「捲土重来」
振付 佐藤洋介
 まずOpeningとしてジャズ系の佐藤洋介振付の『捲土重来』。黒ハット、コート、タイツ、ハイヒールの女性たちが、ステッキを手に、リズミックに艶を振りまきます。途中で二見一幸や柳本雅寛が顔をみせるのはご愛嬌。
北村羽菜、鈴木萌莉恵、百々正子、富永夏紀、成川美樹、西谷 望、真波そら、畠井美香、山田祐子

「ディド」
振付 二見一幸
 次がその二見の井神さゆりのための『ディド』。暗く深い空間、中央のスクエアな光のなか、宗教的な女性ボーカルによって、井神がセンターの小さいテーブルを巧みに使いながら、なにかを求め、祈ります。小品だが、高い密度の舞台が創造されていました。
井神さゆり


「原」
振付 柳本雅寛
生島 翔、児玉アリス、渡辺 幸
赤城里奈、貴島和子、齋藤真唯、高橋奈津子、津田ゆず香、原 佑介
牧 祥子、望月寛斗 柳本雅寛 打楽器/多鹿大介
 柳本雅寛の『原』。生島翔、児玉アリス、渡辺幸の実力者をゲストに、さらに津田ゆず香など8人、カミテのパーカッショニスト多鹿大介の多彩な演奏、変化するとくにサス・ライトという環境のもと、彼独特の動きで様々な人間関係が展開されます。ひとり他と異なる衣裳の生島が核となり全体をリード、最後に出演者が潮騒のメロディーを歌ったりして雰囲気を変えたりもするのですが、途中一瞬姿を見せる柳本の場が、やはりねっとりと絡み付く彼らしさを見せつけます。

「CARMEN
振付 金田あゆ子
 金田あゆ子は『Carmen』。旧作をこの公演のためにアレンジしたもの。自身がカルメンを踊ります。一輪の花を手にしたピエロ(高橋竜太)がドラマをナビゲートします。コンパクト版ですから、主体はカルメンとホセ(中島周)との出会いと交わす愛、エスカミーリョ(佐藤洋介)の出現とカルメンの変心から悲劇の結末、そこでエスカミーリョもカルメンもともにホセに刺されるという物語。
ピエロ:高橋竜太&少女:阿部安珠
イレーネ:大木満里奈 マリア:松尾詩織
カルメン:金田あゆ子&ホセ:中島 周
音楽はシチェドリン編曲のものを主体に選曲。要領よくまとめており、ピエロと、純粋な愛のシンボルとしての少女(阿部安珠)を設定しているところが彼女独特のコンセプトでしょう。なお個人的に特記は、当初の一番街時代からのメンバー、吉川文子、箱田あかね、今間千佳子が、多くの群舞のなかでなつかしい顔を見せていたこと。
金田あゆ子&エスカミーリョ:佐藤洋介