札幌舞踊会Xmas公演「くるみ割り人形」全2幕
2014.12.7 ニトリ文化ホール

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SAPPORO BUYOKAI
「NUTCRACKER」

小倉友梨香& 西野隼人
 第2幕、くるみ割り人形に付き添われたクララがお菓子の国を訪れ、お菓子の精達の歓待を受ける。まだ伸びしろを残した若手も少なくないが、キャリアの長短にかかわらず、各出演者が振付者の意図を汲みとり、その場面に相応しい雰囲気を醸し出そうとする心意気が頼もしい。
 チョコレートの精(藤岡綾子、安村圭太)が陽性な色気を振りまいたのに続いて、コーヒーの精(鈴木伽実)は手足をくゆらせ、蠱惑的な表情を見せる。鮮やかな色合いの衣裳を着けたお茶の精(紙谷朱音、小助川乃依、山科諒馬、酒匂麗)は、達者な踊りっぷり。あし笛の精は、ミントグリーンの衣裳同様、爽やかな味わい。ギゴーニュおばさん(奥山健恵)は思う存分にはしゃぎ、彼女の巨大なスカートの中から現れた10人の子供達の覇気も秀逸。花のワルツでは、花の女王(林香織)がエレガントな空気を振りまいた。
チョコレートの精:藤岡綾子、安村圭太
コーヒーの精:鈴木伽実
       志賀千穂、江良亜希代、山田絵莉香、宮嶋りりか
お茶の精:紙谷朱音、小助川乃依、山科諒馬、 酒匂 麗
あし笛の精:梶原千佳、 横岡 諒
ギゴーニュおばさん:奥山健恵
こどもたち:渡辺佳菜、藤内うらら、佐藤 凜、奥山倫桜
吉田紫麻、奥本真夕、奥山楓杏、西村しずく、水牧拓夢、小林龍生
花の女王:林 香織&花の王様:栗山 廉
お菓子の国の女王:郷 翠
お菓子の国の王様:ジョゼフ・ヴァルガ
 クライマックスを飾ったのは、お菓子の国の女王(郷 翠)と王(ジョゼフ・ヴァルガ)によるグラン・パ・ド・ドゥ。2013年秋に札幌舞踊会が上演した『コッペリア』に主演した郷も見ているが、より古典的な様式のこのパ・ド・ドゥで、プリマの貫禄に磨きをかけた彼女に再会できた。跳躍なりバランスなり、勘どころをおさえた踊りで、観る者の気持ちをそらさない。

高々とリフトされた場面で音楽の盛り上がりと彼女自身の醸し出す高揚感が合致、華やかさを盛り上げた。ヴァルガは、オランダ国立バレエ団から迎えたゲストダンサー。バレリーナに甲斐甲斐しく尽くす誠実な物腰は、文字通り、キャバリエール(本来は騎士ないし騎士道精神の持ち主を意味する言葉だが、バレエでは、主役バレリーナの相手役を務める男性ダンサーを指す)だ。

finale
小さな人形:北川琴菜、長瀬永実、三上紗羅
 札幌舞踊会が30年前に初めて上演した千田雅子版『くるみ割り人形』。初出演、初役のダンサーがいても、同会として踊り継いできた蓄積に裏打ちされた、晴れやかで安定した舞台だった。

2014.12.7 ニトリ文化ホール所見

舞踊批評家 上野房子

STAFF

演出・振付/千田雅子
照明/吉田茂夫
衣裳/井上博子、Angelic Charm
美術デザイン/ダニエル・ジャソニュ
台本・原案/新村訓平

指揮/磯部省吾
演奏/北海道室内管弦楽団

テクニカル スタッフ/アクトコール(株)
大道具/尾崎 要
小道具/吉田ひでお
レーザー/TLLES
スライド撮影/岸本日出雄
スライド オペレート/冨田哲司

舞台監督/斉藤 玲 (株)御影
制作/奥山健恵 札幌舞踊会