バレエ団ピッコロ 第62回発表会
「不思議の国のアリス」
2023.3.31 新宿文化センター

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Ballet PICCOLO
Alice's adventures in Wonderland


Photographer's Eye

バレエ団ピッコロの発表会で、松崎すみ子さん振り付けで名作と名高い「不思議の国のアリス」が上演されると聞き取材に訪れました。

初演はなんと53年前の発表会。もちろん出演者はすべて生徒さん!
大好評を受け、翌々年1972年にバレエ団公演として虎ノ門ホールで再演しています。その際、ソリストはプロダンサーに代え、ハートの女王を松崎すみ子さん自身が演じました。

アリス:門間ノエル  うさぎ:栗原 柊
門間ノエル&栗原 柊
ルイス・キャロルの原作はチェシャーネコ、ハンプティ・ダンプティ、帽子屋、ハリネズミなど、一癖もふたくせもあるキャラクターたちが繰り広げる夢と幻想の世界ですが、ピッコロ版ではあえて説明はせず物語の中に溶け込んでいます。

今回の主な出演者は
アリス:門間ノエル(大野瑞貴)、ウサギ:栗原柊(Kバレエ団)
ハートの女王:菊沢和子、ハートの王様:小原孝司、スペードの王様:須藤悠、ダイヤの王様:高橋純一(敬称略)とそうそうたる面々です。

みつばち
小さいアリス:大野瑞貴
演出・振付の楽しさは格別です。
冒頭、アリスがうさぎを追いかけて、穴に飛び込むために小さく変身します。

ドキドキするその場面を、ホリゾントに映し出されたシルエットで見事に表現しました。もちろん出演者も小さなアリスに変わりましたので、観客の子どもたちも大喜び、夢中で「これからどうなるのか?」と、舞台を見つめています。

キャベツ
花園からキャベツ畑から移動する前に、小さなアリスが大きなアリスにふたたび戻るのは、“いもむし”から“さなぎ”そして“蝶”へと、羽化するさまを表現したのかもしれません。私は「くるみ割り人形」でクララが金平糖に変貌する演出を思い出しまた。
貴族:高橋純一
クレイジー・ティー・パーティ
クレージー・ティー・パーティでは奇想天外なお客たちにに圧倒されたようで、早々と退散し次のドアに向かいます。さあ、いよいよトランプ王国です。
ジョーカー:田代夏花、福田つぐみ
ハートの国とダイヤの国は敵対関係にあるようで、あわや一触即発の危機に襲われます。が、それとは別に「クローバーの王様、女王様」は愛を育んでいるようです。
ふと目を覚ますとそこはいつもの森の中、アリスは夢を見ていたのです。


やっとコロナ禍が明け、元気に踊っている小さなダンサーを、目を輝かしてみている客席の子どもたち。その隣で「急がなきゃ、急がなきゃ」と毎日をあくせく過ごしている元子どもたち。その頃は何にでも興味を持ち、勇気を出してうさぎの穴に飛び込んだ日々を思い出したのではないでしょうか。

53年前、そして今も、松崎すみ子さんが伝えたかったのは、
Oh ’tis love ’tis love that makes the world go round.
「愛こそが世界を動かしている!」に違いありません。


2023/3/31 新宿文化センター所見
写真・文 鈴木紳司

ハートの女王:菊沢和子 ハートの王様:小原孝司
クローバーの女王様、王様:山口裕美&久野直哉
アリス:門間ノエル、ハートの王様:小原孝司、ハートの女王:菊沢和子、うさぎ:栗原 柊
STAFF
原作/ルイス・キャロル
演出・構成・元振付/松崎すみ子
改訂振付/松崎えり

音響/中村蓉子
照明/ステージプランニング 小林昭雄
舞台監督/森 荘太