NBAバレエ団 ショート・ストーリーズ・9
〜バレエ・インクレディブル
2018.6.15〜17 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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NBA Ballet Company
Short Stories 9


隅田有のシアターインキュベーター

米国にゆかりのある振付家の7作品に、宝満直也と佐藤圭の新作を加えた9演目を、3部構成で披露する『ショート・ストーリーズ・9』が、さいたま芸術劇場で上演された。
「スターズ&ストライプス」より
パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシン
音楽: ジョン・フィリップ・スーザ
竹田仁美&高橋真之
幕開きは、バランシンの『スターズ・アンド・ストライプス』のパ・ド・ドゥ。竹田仁美と高橋真之が出演した。パとパの間のアソビを排したアスレチックな動きが小気味良く続く。高橋はジャンプの際も空中でポーズを決めていた。
ガチョーク讃歌」より
振付:リン・テイラー・コーペット
音楽:ルイス・モレウ・ガチョーク
伊東由希子、鈴木恵里奈、野久保奈央
土橋冬夢
二曲目の『ガチョーク賛歌』よりトリオは、コミカルな表情も重要な押さえどころ。鈴木恵里奈、伊東由希子、野久保奈央の三人が、息のあったダンスを見せた。
佐藤圭振付の『La Vita』は女性のソロ。タイトルはイタリア語で「人生」や「命」を意味する。幕が上がると、スカートのついた純白のユニタード姿の女性が舞台中央に横たわっている。バレエピアニスト、マッシミリアーノ・グレコのムーディな音楽に合わせて、ダンサーが目覚めるように起き上がり、踊り始める。時に両足を揃えてポアントで立つなど、無垢なヒロインが徐々に自分の世界を広げていくイメージが感じられた。ラストは冒頭のポーズに戻る。主人公が短い夢を見ていたかのような甘やかな幕切れだった。
「La Vita」
振付:佐藤圭
良くまとまった作品だが、あえて言うなら、構成、音楽、衣装、照明など、全てがハマりすぎていていたのではないだろうか。王道の題材をストレートに料理した点は買いたいが、あと少し引っかかる点が欲しかった。この日の昼の公演では、佐藤本人が踊っているが、筆者が見た夜の部は峯岸千晶が出演し、伸びやかな踊りを見せた。
峰岸千晶
「ケルツ」
振付:ライラ・ヨーク
音楽:アイルランド民謡
グリーン:新井悠汰
第一部ラストの『ケルツ』はライラ・ヨーク振付のアイリッシュダンスを使った作品で、30人を超えるダンサーが出演する迫力のあるステージ。上半身を動かさずに、下半身は素早いステップを見せるソロのグリーン(新井悠汰)とコール・ド・バレエ、男女がエネルギッシュに飛び跳ねて踊るレッド(猪嶋沙織・清水勇志レイ)、しっとりと叙情的なブラウン(浅井杏里・古道貴大)、5人の男性によるパワフルなメンズダンス(河野崇仁、多田遥、玉村総一郎、土橋冬夢、飛永嘉尉)など、見所がつまっている。
レッド:清水勇志レイ&猪嶋沙織
ブラウン:古道貴大 &浅井杏里
グリーンの新井は、細かい足さばきの連続にも関わらず、全く力みを感じさせない。大きなうねりが表現されるコール・ド・バレエの中心にあって、核となる存在感があった。ソリストだけでな く、コール・ド・バレエも、一人一人が舞台の上で自己主張できるのは、NBAバレエ団の特色だろう。本作のようなキャラクター性のあるダンスは特に引き立つ。ステップだけでなく、顔の向きも厳密に決まっている振付を、与えられた通りになぞるのではなく、それぞれが自分のものにして踊っていた。
「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ
振付:マーティン・フリードマン 
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
第二部は、マーティン・フリードマン版『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ。2017年にNBAバレエ団が全幕を日本初演した作品だ。竹内碧のジュリエットは瑞々しく、宮内浩之のロミオは情熱的。幕が上がった際、屋敷から漏れる光が茂みを照らす背景画に、客席から感嘆の声が漏れた
竹内 碧&宮内浩之
ザ・リバー」よりボーテックス
振付:アルヴィン・エイリー
作曲:デューク・エリントン
続いて、デューク・エリントンのジャズを使った、アルヴィン・エイリーの『ザ・リヴァー』より女性ダンサーのソロ”ボテックス”。渦巻きを意味するタイトルの通り、高速の回転が続く。勅使河原綾乃は、ピケターンもピルエットも正面まで回りきり、ポーズを見せる際はしっかりと止まって、渦を表しても渦に飲まれない安定感のある踊りを見せた。
勅使河原綾乃