東京国立博物館エキサイティング・ミュージアム Act.3
  
光降るファンタジー 「鳳凰伝説」

2006.3.25 東京国立博物館


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Haruka Ueda

コロス
荒木まなみ、桑野東萌、野村真弓
林 真保、皆川まゆむ、稲見有維子
星野琴美、細島彩夏
舘形比呂一
Photographer's Eye
東儀秀樹さんと舘形比呂一さんの夢の組み合わせによる「鳳凰伝説」
東京国立博物館の特別室はキャパシティが300人強(×5回公演)。チケットは発売と同時に完売、オークションでも奪い合いだったのでしょうか。ファンとはまことに凄まじきもの、いえありがたいものです。そのため批評家諸氏の誰一人として招待券が発送されず、この「鳳凰伝説」を取材できたのはカメラマンだけでした。
“鳳凰”と聞いて私がイメージしたのは手塚治虫さん原作の「火の鳥」でした。永遠の命を求める時代の権力者が入り乱れ 不死鳥を追い求める壮大な宇宙ロマンなのですが、描こうとしたのは“輪廻”それとも“永遠の愛”でしょうか。猿田彦という主人公らしき人物がいるのですが、運命に翻弄される弱き人間像をこれでもかとばかり見せつけてくれます。
三田和代/東儀秀樹/宮川安利
はるか昔.....。鳳・凰の誕生は同時でした。
振付の上田遙さんは対極の存在として“鳳“と”凰”を捉え、〈火と水〉〈静と動〉に描きます。(想像上の霊鳥“鳳凰”は 鳳は雄、凰は雌として別の存在に考えられていたようです。)笙を奏でる 東儀秀樹さんが静と水、ダンサー舘形比呂一さんが 火と動を担うかと思えばそうではありません。水鏡のような静寂を漂わせていた 東儀さんが一転、嵐に転じまた静に戻る。炎に身を焦がし己を消滅せしめようとする火の鳥を演じていた 舘形さんがコロスと同化したかのように無に帰する。瞬間、輪廻転生を感じないではいられません。
東儀秀樹
「永遠の命が欲しい」と願う少女に「今の命を大切にすることが次の命につながる」と諭す三田和代さん、自然の摂理 を説き・神意を伝える“巫女”としての登場と解釈しました。

舘形さんは筋骨隆々とした素晴らしい肉体なのにミロのヴィーナスを思わせるやわらかな美しさを併せ持っています。客席には圧倒的に女性が多いのですが、みつめる目が微笑みが「きれい!」と物語っていました。

雅楽界のイケメン代表 東儀さんは音楽家のはずなのですが、「キング・リア」で見せた舞台人の貫禄にますます磨きがかかり、静かなる存在感は並のダンサーでは到底かないそうもありません。

東儀秀樹&舘形比呂一
時に愛し、時に憎む存在としての両者の葛藤シーンは見ている方がつらくなるほど切なく美しいものでした。どちらが欠けても存在しえないことが解っているからこそ愛憎が増すのでしょうか。演者としての 東儀秀樹さんと舘形比呂一さんはどちらも一流ゆえに認め合い戦っているようでした。

【対極の出会い〜鳳と凰〜】を経て二人が退場する際にやっと気づきました。自身の身体を捉えて離さない帯はまるでへその緒のように両者を繋げていたのです。どちらかが母親?そんなはずはありません。お互いがお互いを憎みながら必要とする悲喜劇を描くことによって渾然とした希望を私たちに感じさせたかったのではないでしょうか。圧倒的な二人のカリスマがいるから成立した「鳳凰伝説」なのです。

2006.3.25所見

ダンス・スクエア 鈴木紳司

STAFF
演出・振付/上田 遙
音楽/東儀秀樹・坂出雅海
照明/日比野 豊(Office Hibino)
衣装/日爪ノブキ
台本制作/河内連太・東儀秀樹・上田 遙
舞台監督/藤本典江
プロデューサー/別府尚武(B.B.Productions)