森田友紀 Ballet Presentation'13
「シンデレラ」全幕

2013.7.28 アクトシティ浜松大ホール

1of 3
Yuki Morita Ballet Presentation'13
CINDERELLA


「妖精エルフの森」

エルフ:高倉夕実

「ミンクス組曲」


「サタネラ」より

山田裕也&丸地利沙

Photographer's Eye

浜松の森田友紀バレエは2年ごとに全幕バレエを上演する意欲的な団体ですが、今回は愛娘:友理さんの演出・振付による「シンデレラ」で新たなスタートを切りました。

プログラムで真っ先に目に入ったのは、シンデレラがガラスの靴を見つめて物思いに耽るイラストでした。粗末な服の森田シンデレラとペン画の背景をコラージュしたような墨一色のものです。実在する女性と有名なストーリーが融合する不思議な挿絵は、すでに出会ってしまった2幕と再び出会うだろう3幕までのシンデレラの心境を観客一人一人に語りかけてくるようです。

憧れの舞踏会、華やかな宮殿、王子様と二人きりのダンス、「あれは夢だったのか、現実なのか。」片方だけ残ったガラスの靴を見つめ、甘い思い出と未来への不安に苛まれている、と私は解釈しました。


「シンデレラ」全3幕

義妹:本田みなみ&義姉:河嶋優里
義母:坂本憲志
幕開きドン前で、目にも鮮やかなバイオレットのチュチュの仙女がみすぼらしい着衣を羽織ったとたん、腰が曲がり老婆に変貌する様をみせることで、一人二役であることと彼女がキーパーソンだと観客に示します。また、森田版「シンデレラ」に父親は登場しません。頼る人がいない家で義母姉妹に虐げられ、亡き母を思い出しながら一人孤独を募らせる。そんな逆境から物語はスタートします。
シンデレラ:森田友理
一人になったシンデレラがほうきをパートナーに見立て可憐に踊る姿は儚くも美しいものです。衣裳も最新の帽子も作ってくれる義母ではないのですが、儚い望みが踊りからにじみ出ました。

貧しい老婆が食べ物をねだる場面ではアシュトン版のパンではなく、スープを与えますがスプーンを奪い取るようにして食べ始める老婆の偏屈さがドラマを引き締めました。
仙女:酒井梨穂