東京シティ・バレエ団「ロミオとジュリエット」

2012.3.30 新国立劇場中劇場

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Tokyo City Ballet

Romeo and Juliet

吉田悠樹彦の
Driving into Eternity
 東京シティ・バレエ団は「ロミオとジュリエット」(中島伸欣版)を上演した。初日はロミオは黄凱、ジュリエットは橘るみが演じた。中島版は演出や江頭良年による舞台美術と石井清子・中島による振付がスペクタクルを描く。演劇のシェイクスピアの原作の持ち味を大切にした現代日本の代表的な中堅作家による良版である。

 イタリアの街ヴェローナを舞台に、有名なロマンスが物語られる第一幕は、モンタギュー家とキャピュレット家の対立、やがて劇的に出会う主人公達とその恋物語が描かれる。

キュピレット:青田しげる&モンタギュー:北条耕男
 中島はヴェローナの市街や二つの家の間で繰り広げられる人間模様を可動式の舞台装置などを用いながら説得力のある表現にしていく。従って見る側もどのように良く知られた物語をバレエとして描いていくのか注目し楽しみながらみることができる。演劇の名作として原点に優れた台詞があるだけに、シーンの展開や台本の解釈、マイムも意味を持つ作品だが、オーソドクスな物語バレエに終始していないことも大きなポイントだ。
ジュリエット:橘るみ&乳母:加藤浩子
振付の所々には中島のモダン作品での振付に通じる要素を構成や展開で感じた。創作でオリジナルを追及しようとしているのか、いわゆるこの作品の名シーンやこれまでの名版を踏まえながらも、中島自身の技法で作品を描き出そうとするところが好感の持てるところだ。

一方、江頭は「舞台美術は『背景』ではなく心理描写だ」と述べるが、その作品はダンサーたちの世界と融合しドラマツルギーを描いていく。かつての前田哲彦が提唱した“動視覚アーツ”といった考え方にも通じるように中島=江頭の二人の才能は古典演劇の世界を描いていく。 

ジュリエット:橘るみ&パリス:小林洋壱
モンタギュー家に生まれたロミオは親友マキューシオ(チョ・ミンヨン)、ベンヴォーリオ(春野雅彦)に誘われ、対立するキャピュレット家の舞踏会に忍び込む。この家の令嬢ことジュリエットはパリス伯爵(小林洋壱)と結婚することになっていたのだが、彼と運命の出会いをすることになる。若い二人の恋は燃え上がり密かに結ばれることになる。惹かれあう二人がアダージョやポピュラーなバルコニー・シーンでみせた踊りはこのドラマのエッセンスを良くつかんでいる。雄々しくピュアな精神を持った黄とチャーミングな乙女を描く橘の二人の世界が重なり合い愛の鼓動を表現していく。やがて町の広場で両家の争いが起こり、結果、決闘を止めに入ったキャピュレット家のティボルト(キム・ボヨン)がマキューシオを殺し、ロミオがその敵をとるという事件が起きるのであった。
ロミオ:黄凱&ジュリエット:橘るみ
マキューシオ:チョ・ミンヨン
橘るみ/小林洋壱/キュピレット夫人:安達悦子/青田しげる